事業に失敗してからというもの、彼はめっきりやつれてしまった。ある日、妙にそわそわする彼の姿に、私は彼がどこか遠くに行ってしまうのではないかという胸騒ぎを覚えた。私は尋ねる。「ジョニー、どこ行くの?」彼は寂しげに笑った。『ちょっと便所に――』そしてそのまま、戻ってくる事はなかった。
友人から「動画作ったんだけど、感想聞かせて?」とのメールが届いて、メールに添付された動画をダウンロードしようとしたところ、『ダウンロード完了まで4時間29分』と表示されたので、友人に「うん、すごい、すごい、こう……良かった。クリエイティブだった。次も期待してる」ってメール送った。
もう十年以上昔の話なんだけど、父と大喧嘩をした事がある。三日三晩お互いの意見を譲らず、業を煮やした母親が「どっちも阿呆」と仲裁。僕と父はようやく仲直りした。喧嘩したあと、父とはより一層仲良くなった気がする。こうして、我が家の「辻ちゃんと加護ちゃんどっちが可愛い戦争」は幕を閉じた。
さっき、家に宗教勧誘のおばさんが来て、断っても全然聞いてくれなくて正直かなり面倒だなぁと思っていたら、家の奥のほうから『おにいちゃーん! 呼ばれてるよ!』という声が聞こえたので「すみません! 妹が呼んでるので!」って言って強引に話を打ち切れた。本当に感謝してるよ。ふぁぼ通知には。
今日は友人みんなで一緒に単位取ろうねって言った講義に出てみたら友人誰もいなかったし、出席時にいなかった三人分の返事を僕がする羽目になったし、裏声まで使って返事したのが今更恥ずかしくなってきたし、いま帰り道の途中の田んぼの真ん中で「孤独ってなんだろう」って思いながら座って星見てる。
以前、睡眠すら捨ててポケモンやってたんだけど、ある時『おかねの むだづかいは ダメなこと だけど じかんの むだづかいは もっともっと ダメだよね! いましか できないことって ぜったいに あるはずだもん!』という台詞がゲーム中に出てきて、泣きながらプレイ時間600時間に達した。
ごめん。ごめん。女の子と同棲したいのは本当。あわよくば身体にぴたってしてくれる子と同棲したいのも本当。長続きすると面倒だから、夏まででいいとか。僕は背が低いから、小さい子が良いとか。沢山の僕の我が儘の、君は全てを兼ね備えてる。でも一緒には住めないんだ。本当にごめん。じゃあね、蚊。
大学に入学してすぐに尊敬する先輩が出来た。先輩が教えてくれたTwitterアカウントは真面目な呟きに少々ネタを散りばめてて、こんな呟きがしたいと思ってネタを呟き始めた。だから僕も後輩の鑑になりたいのに、最近では後輩からアカウントを聞かれても必死に隠す毎日でどうしてこうなった……。
遂にその時はやってきた。何度だって練習した。周囲から『練習しても時間の無駄だよ』とも言われた。でも諦めなかった。この練習が実を結ぶ時が来ると信じていたから。さぁ、今がその時。精一杯の笑顔を浮かべて、僕は口を開いた。
「え、Twitterですか? いえ、僕はそういうの苦手で(笑)」
「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」
『それは王女さまです』
「なっ……」
『でも、あくまで王女さまはお若いから美しいだけです。王宮で鍛えられた会話術、冷静沈着な考え方などを鑑みれば、世界で一番“魅力的”なのは、女王さまでいらっしゃいますよ』
「ねぇ、鏡……キス、しよっか……」
妹から『お昼にサンドイッチ作った!』という可愛らしいメールが届いていたので、冗談で「美味しそう、好きな人でも出来た?」と返信してみたら、『なんで知ってるの!? やっぱりお母さん!? もー、ほんと口軽いんだから……』と返ってきたときには、悟りの一つや二つくらい簡単に開けそうだった。
25年ぶりだったかな、金環日食が日本でも見ることが出来るらしくて、同級生女子が「金環日食見る?」「見る、早起きする!」などと会話をしていたんだけど、じゃあ僕も明日25年ぶりに朝6時に起きるので、女子大生は早起きして僕に会いに来てほしいし、あわよくば僕と金環日食してほしい(下ネタ)
小学校の時に告白したけど駄目だった女の子から同窓会の招待が届いたんだけど、いつの間にか知らない苗字になってて、恋愛感情なんてもう無いはずなのになんだか切なくなった。これ、あれだ。Twitterでアカウントを削除したフォロワーさんが別名義で楽しくやってるのを見つけた時の気分だ……。
自由って何だろう。自由にも様々な自由がある。何をしても良いという意味ではないはず。例えば「Twitterで何を言おうが自由」と言うけど、それもあくまで常識の範囲内で、って事だろう。自由って不自由だ。自由が一番難しい。『それでは今から自由に二人組を作ってください』が一番難しい――。
「ね、好きって10回言って?」
『たすきを隙間なく締めた少年はスキップで位置についた。パン食い競走。コースきっちりまで目をやる。パンは遠く、油断も隙もない。リスキーだが空きっ腹で良かったと、髪を手で梳き少年はすすき揺らぐ透き通った空を眺めた』
「そんなに好きって言いたくない!?」
一年以上ぶりに大掃除をしてみたら、戸棚の中から『本当に困ったときに開けなさい 母より』と表面に記された、見たことのない箱が出てきた。箱の中にはスパゲッティの麺。その途端、そういえば二日間何も食べていないことを思い出して、母の愛に思わず涙が溢れた。スパゲッティの賞味期限は切れてた。
「どんな夢もきっといつか叶う」とか良く言われるけど、今日の夢は妹が『この人が私の彼氏なの♡』という謎の言葉を吐きながら男を連れてきて、更に『私たち、今度結婚する事になりました♡』という意味不明な事を言うという夢だったから、絶対にそんな夢が現実になるわけがないし、今泣いてないです。
僕も……僕もメシをよそえなかった……?
『ね、ねぇ! もしかして……』
彼女の叫びに僕は答えなかった。手が震える。これは緊張しているから? それとも……。
パリン!ガシャン!
何度も何度もよそえなくて。皿を落として。僕も彼女ももう気付いていた。
病魔は、僕の身体をも侵食していた。



陽だまりみゆき
































































































































































































































































































































































































































































